「ボトルネック」 米澤穂信
内容説明
気づけば僕は「自分が産まれなかった世界」にいた。街並や社会に大した違いはないが、そこでは、死んだはずのあの人が生きていて-。若さ特有の「痛々しいオーラ」が横溢する、「現在進行形」の書き下ろし青春小説。
う~~~~~~~~。
作者の米澤さん自身が「これも米澤穂信です」と言っていたようですが
本当に今までの作品とはかなりカラーが違うです。
いつもの感じと思って読むとかなりびっくりするかと。
お話のさわりを書くと
好きだった子の弔いに行った場所で事故に遭い、気づくと家の近所に倒れていた主人公、嵯峨野リョウ。家に帰ってみると、見知らぬ女性がドアを開けた。その人は産まれていなかったはずのお姉さんでーとそんなお話。
いわゆるパラレルワールド迷い込みなわけですが。
こんなに痛々しい話、今まで読んだパラレル物ではなかったなあ。
迷い込んだ世界では、死んだはずの人が生きていて、潰れたはずのお店が営業していて、実際の世界では失ったり壊れたりしているものがほとんど存在している。
それは一体どうしてなのか。
……読み進めるうちに、主人公の静かな絶望がずーんと心にきて、もうなんだか先を読み進めるのがつらかったです。「姉」であるところの人の明るさで物語自体はどーんと暗くはなってないんですが、それが余計になあ……。
ラストも、偶然同じような終わり方をしている作品を、同時期に違う媒体で見ていてかなり凹んでたので…昨日けがしたところをもう一度傷つけたみたいな痛みが伴いました。つらい、ほんとつらい。
読み終わってから、泣いてつらさを少しやわらげましたが。久しぶりだよ、こんなに泣いたの。
この作品は、今現在精神的に落ち込んでいたりとか、あまりいいコンディションじゃないときに読まないほうがいいと思います。もしくは読むとしても、主人公の気持ちにシンクロしないように気をつけて。そうでないとあたしみたいに痛い思いをするかと。
……しかしこれ、帯によると
「渦中にいなければ感じ得ない青春を描いた」「痛い」作品らしいんですが。
あ、あたしはいまだに青春真っ最中ってことですか!?しかも16歳のあたりの。
ううううううーむ。
大人の人が読むと平気なのかなあ。
この本は自分で購入したのですが、たぶん読むたびに自分のトラウマを刺激して身を引き裂かれるような痛みを感じると思うんで、…もう読み返さないと思います。
きっと二度と読まなくても、内容を忘れることはない。あたしにとっては苦しい話でした。