「東京公園」 小路幸也
内容説明
ファインダー越しに感じてるこの気持ち。これって、ただの好奇心? それとも、もしかして恋? カメラマン志望の大学生・圭司をとり巻く様々な人間模様。柔らかな光を浴びて、ゆっくりと芽吹く恋の物語。
さらりーっと読めた小品でした。
特に山も谷もなく……強いて言うなら『サザ○さん』のような日常を描いた作品。サ○エさんは延々と続く日常が描かれるけど、この作品はその日常の一瞬を切り取った、そんな感じ。
主人公はカメラが趣味で、時間があれば近くの公園に行ってそこに集う‘家族’の写真を撮っている大学生。その彼に「自分の妻と娘の写真を撮ってほしい。彼女たちが公園に行くときにはいつもついていってくれ」という変な依頼が舞い込み…?というお話。
遠くからファインダー越しに、あくまで他人として、接触することなくその母娘を見守る主人公はいつしか単なる被写体として以上の気持ちを抱いているような気がしてきて…というように上記内容説明にはありますが。そんな話だったっけ…?(注:今日読んだばかりです)
この主人公が被写体に恋してるかもしれない、なんてちーっとも思わなかったんですけど。作中の登場人物は皆そう言ってましたが。単にあたしが鈍いだけか?
主人公にあまり強い個性がなくて、周りの脇役の方が印象強かったです。淡々とした生活、淡々とした感情……。恋してるのかも?と思っても、いたって心は平穏というか。
なんでこの子、こんなふうに達観してるんでしょうか。まだハタチそこそこだろうに。もっとどかんと一発ぶちかませよ!若さにまかせて!!(←無責任に煽るオトナ)
いや、あたしは割とこの感覚には同意できるんですが。↑こういう人も多いだろうなとも思います。
なんというか……すごく自分に満足しているというか、まだ迷いとかそんな段階にも至ってないイメージでした。モラトリアムってやつかな?
たぶんこの話は、「自分がしあわせ=誰かもしあわせ 誰かがしあわせ=自分もしあわせ」←これが大切なんですよっていうメッセージがこめられてると思うんですが。
主人公は今の状態が大変幸せそうなので、このまま成長せずに停滞しているのが一番自分も他人も幸せなんじゃ……?そう読んでしまうのは間違いなのかな。
なんというかすごく、イマドキな感じのお話だなと思いました。
おお、書くことないやと思っていたら長くなってしまった。
全体的にとても穏やかなトーンですので、読むと心が静かになります。そんなお話。