「やがて目覚めない朝が来る」 大島真寿美

やがて目覚めない朝が来るやがて目覚めない朝が来る
大島 真寿美

ポプラ社 2007-11
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内容説明
蕗さん、というのは、私の父方の祖母の名だ。ある瞬間、ふと、蕗さんの話がしてみたくなるー。すべてを包み込んで穏やかに流れていく時間と、人生のきらめきを描き出す。

これも買ってしばらく放置してた本でした。
読みたいけどなんとなく読めない。今考えるとその理由もおぼろげならわかるんですが、またそれは下で触れます。

今回のお話は、有加とそのお母さん、そして義母の蕗さんと、その人たちの周りの人たちの日常について描かれてます。お父さんが蒸発してしまったりだとか、有加とお母さんが義母宅に転がり込んだりだとか、出来事について書くと大変そうに見えますがこの人たちはそんなこともなく。ひょっとして少しも騒がなかった?と思ってしまいそうなほど恬淡としてます。
それは有加以外の人がみなある程度大人で、精神的にも強くて、そしてとても仲良しだったからこそだったんだと思います。

ここんとこずっと世帯の人数が減り続けてるらしいので、親以外の大人と触れあったり話したりする機会はあまりなかったし、今もなかろうと思うんですが。大人との触れ合いを避けがちになる思春期にこそ、そういう機会があったらいいなと思います。それも日常的に。
この作品に出てくるみたいな大人を見てると「大人になるって捨てたもんじゃないかもしれない」って思う気がするんですよね……
テレビで将来を憂うサラリーマンなんか見たくないし。つうか見飽きてるし。そんなん見れば見るほど未来のこと考えるだけでしんどくなるしな。ああもうしんどくなってきた(←自爆)。

まあそんな年配者とのつきあいには限りがあるわけで。誰しも生老病死から逃れられず、どんどんと弱っていって、やがて目覚めない朝が来るんですね。大島さんはそんな重い展開の中にも、ほのかに希望を与えてくれてました。
実はわたし、昨月祖父を亡くしまして。去年1年その弱っていく姿を目の当たりにしてたので、この話も終盤読むのがつらかったです。泣けました。それでも暗い所に目を向けたがるわたしにも、この話はただ悲しみの再体験をさせただけではなく、何か大切なものをくれた気がします。うまく言葉にならないんですけどね……

あと数点いいなと思ったところ。
大切な人を亡くしたお母さんが、何か素敵なものを見たときに、ああもうあの人はこれを見られないんだなと思うってとこ、共感しました。綺麗な夕焼けみても、冴え冴えと光る満月を見ても、一緒に楽しめる場所にもう祖父はいないんだなあとしみじみしていたので。

あと主人公のウエディングドレスがすごく素敵でしたね。
いいなあこんなの。なんかサウンド・オブ・ミュージックの曲でこんなんなかったか?と思ったものの漠然としか思い出せず……My Favorite Thingsだ!検索したら一発だった。ってまんまの題名だというのに…英語は苦手なのです。

大島さんの作品の主人公って、強い個性はないけどなんだか目にとまってしまう雰囲気があるように思います。
それからぽわんとしてるけど夢みがちなわけでなく、とても繊細というわけではないけど人の発する何かにはきちんと気づくことができる、とかそんな感じ。
たぶん現実にいたら、めちゃめちゃ美人!とかでないけど気になる女性だと思うな。


うおー長くなってすみません。
淡々とした物語で、読後感もあわいんですが、なんだか心に残ってしまう。そんなお話でした。

やがて目覚めない朝が来る

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