「黄金の王 白銀の王」 沢村凛
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内容説明
生まれた時から「敵を殺したい」という欲求を植えつけられていた2人の王。彼らは争いのない平和な世の中を作りたいという思いを理解し、陰で協力し合う道を選んだ。だが、それは想像以上に厳しいものだった…。
とっても読み応えのある作品でした。そして長い……
読了したときの達成感は、ここしばらく読んできた作品では一番かも。そしておもしろかったです。
沢村さんの作品は「カタブツ」とか「さざなみ」とか現代ものは読んでいたんです。でもこういう系統のは初めて。ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞されてると聴いて、ああファンタジーも書けるのね。と思っていましたが…本当に力のある作品でした。
ロミオとジュリエットのモンタギュー家とキャピュレット家みたいに、いやそれ以上に仲が悪い人たちがいまして。毎回戦うたび皆殺しにするくらい相手を痛めつけても、次にはまた相手に報復される…ってのを延々続けてるわけです。そして穭(ひづち)という名の鳳穐(ほうしゅう)という名の一族の頭領と、薫衣(くのえ)という名の旺廈(おうか)という一族の頭領の時代にはじめて、お互いの思いを殺して平和な国づくりをすることに決めるのですが。これがなかなかどうして大変でして。その計画の始まりと、終わりまでの経過をつづった物語です。
鳳穐の長が国を統べているように見せかけ、実際は妹婿に入った薫衣と話し合い、世を治めてるんですけれど。旺廈の人間にとっては、許しがたき行動をとってるように見えるんですよ薫衣は。逆に鳳穐の人間からしたら、薫衣は恥ずべき売国奴なわけで。そういう、穭以外にはほとんど理解できないであろう生き方をしている薫衣が見ていてとても切なかったです。
でも耐えがたきを耐え、しのびがたきをしのんで、本当に自分がなすべきことをなしている姿には胸を衝かれる思いでした。もちろん、穭が根回ししたり前準備をして、たびたび窮地に陥らされる薫衣を必死で助けるのもすごいです。
この歴史のというか、2つの部族の関係の大転換は、この2人以外にはできなかったでしょう。
重いところばかりではなく、総大将として薫衣が向かった戦の部分などなど、おもしろいところもたくさんあります。わたし、こういう戦略で強い敵を少数部隊で打ち破る話好きです。ちゃんと読んでない三国志とか、戦国時代の武将の話を読みたくなりました。
唯一この話でなんだかなぁ…と思ったのは登場人物の名前ですか。
何回読み仮名ふってもらっても覚えられず、最初の人物一覧を何度読み返したことか!まあこれはわたしの頭が悪いからつまづいたんだと思いますが。
この文章書くときもIMEパッドで探してやっと見つけましたよ。いつ使うのかなぁこういう字って。
たぶんこの作品、わたしよりファンタジーが好きな人のほうが楽しめると思います。
いや、わたしも十分楽しんだんですけど。
沢村さんはファンタジーものもすごいと今回わかったので、過去の作品もまた読んでみようと思いました。