「光」 三浦しをん

光
三浦 しをん

集英社 2008-11-26
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内容説明
天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花を救うため、彼はある行動をとる。20年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もうひとりの生き残り・輔が姿を現わす…。日常にひそむ暴力を描く渾身の長編。

うーん、これは。
上記内容説明で、今までのみたいな楽しい話じゃないんだなぁとは思ってたんですが。(注:以下ネタばれします)

美浜島で穏やかな生活を送っていた信之。きれいな恋人・美花や父親に虐待されている輔らと共に過ごしたその島は、津波により一晩にして死の島と化した。その後島に来ていた釣り人に凌辱される美花を守ろうと、その男を殺した信之はその事実を封印し生きていた。が、20年後、同じく生き残った輔がそのネタをもってゆすりに来た。そして信之は…てなお話。

全編通して描かれる暴力。その「つながりっぷり」に慄然としました。
父親からずーっと傷めつけられる輔の姿にも心が痛かったし、暴力で鎮圧した禍を、蒸し返そうとした輔を再び暴力でもってねじ伏せようとした信之も、あとになって考えると気の毒な人だなと。
昔からずっと好きなのは美花で、美花のためなら殺人も厭わないのに、もう叶わない届かないその恋心。

そんな信之の妻子がかわいそう…という風にもならないのが、三浦しをんさんの描き方のいやらしいところですかね~。子どもはもう無条件にかわいそうなんですけど、これはまあ信之がまだ愛そうと努力してるからまだよくて。
奥さんの救われなさがなんだかなぁ…な感じでした。
ばれてないと思い込んで輔と不倫したり、そのうち信之が家に帰らなくなったらまずそれを心配するよりも自分の保身にばかり気を配って、ストレスを子どもにぶつけたり…この女誰かどうにかしてください。
途中までかわいそうな人だ…と思えてたんですけど、その後は単にひややかな視線で見るばかりでしたよ?

最後の最後、全部知ったうえでやっぱり自分の身を守るため、何もかもを自分の中に封じていつもどおりの妻を演じるこの女の人が、一番化け物なんじゃないかと思いました。

いろんな意味で暗い、どうしようもない話なんですが、信之と輔の記憶の中の、「月の光が伸びて光の道を作っている海面」のイメージはとてもきれいで素敵だなあと思いました。

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